組織として大切にしたいことが
伝わる評価制度を作る

一般社団法人なかの屋ホールディングス

一般就労が困難な方の訓練や支援を行い、サポートを受けながら就業機会を創出する福祉サービス事業を展開し、就労継続支援B型施設を運営するなかの屋ホールディングス様。グループでは事業所も複数展開し、現在は就労継続支援A型、B型事業所を複数運営されています。EDGEは、評価制度の構築および評価制度運用に関する支援を行ってまいりました。EDGEのサポート中に感じたことや成果を専務理事 上田育美様(写真右)、常務理事 五葉桃子様(写真左)に伺いました。

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  • 組織体制の変更によって、評価制度構築の優先順位が高まった

    佐原:まずEDGEが関わる前の状況や課題についてお聞かせください。

    上田:組織体制の変更で、私と五葉さんが3事業所の管理者のマネジメントを横断的に行うことになりました。その際に改めて各事業所の給与水準や評価の状況を並べて見た時に、共通の指針が不明確であるが故に、基準が統一されていないという課題が明らかになりました。もちろん各法人で就業規則などは整備しており、その中に評価のやり方や資格と経験による給与の範囲、昇給に関するルールも記載はされています。ただ、就業規則に記載されているものだけで現実的に納得感のある評価や育成までを考えて運用することは難しく、組織として何を大切にしているのかを打ち出すには抽象度が高すぎました。
    そこで、細かい評価の手順や方法までも含めた評価制度構築が優先すべき事項だという結論に至ったのです。
    私は、この組織を長く続けていきたいと思っています。職員の皆さんが「自身の処遇がどうなっていくのか?」「何をすれば評価されるのか?」が明確にわからなければ、長く働きたいと思ってくれないと思うのです。
    組織規模が大きくなるにつれて、さまざまな方が入社されますし、改めて共通の評価基準が必要だという思いが強くなっていきました。

    五葉:事業の拡大に伴って在籍する人数も増え、一人ひとりが見ているものも考え方も異なる中では、ミスコミュニケーションやすれ違いが起きやすくなります。このあたりできちんと言葉として、組織の方向性やあるべき姿を示し同じ方向に向かって進んでくれた方を評価するような仕組みが必要だと強く感じました。

    上田:そんなことを考えていたタイミングで複数のコンサルティング会社に相談をしました。EDGEさんに相談した際には、私たちが漠然と抱えている課題を掘り下げて質問してくれ、それを整理し、さらに深掘りをして、私たち自身が考えるサポートをしてくれたこともあり、最も信頼できると思いました。

    五葉:EDGEさん以外の企業にも相談はしたのですが、「福祉業界はこうですから。」という感じで、業界の特徴ありきで提案してこられました。EDGEさんはもちろん様々な業界や規模の会社での実績がある中でも、「同じ業界であっても各社で文化も異なるので、各社の状況にあった制度構築をしましょう。」と言ってくれました。私はその言葉が一番腑に落ちたので、EDGEさんにお願いしたいという結論に至りました。

  • 感じた「言語化」の高い壁

    佐原:実際にご契約いただいて、スタートしてみていかがでしたでしょうか。

    五葉:まず驚いたのは、評価制度の検討にあたって「人材要件」を作る過程でした。評価制度を作るまでは「人材要件」という言葉すら聞いたことがありませんでしたが、「会社として職種や職位ごとに何を期待しているのか。」「そこにはどんな能力や経験が必要なのか。」こういったことを言葉にしていく作業です。最終的にはこの人材要件を元に評価表を作成していく作業でした。現状私たちが抱えているモヤモヤや課題、職員の方にはこういう振る舞いをしてほしい、こういうことはやめてほしい、といったことを思いつく限り全てEDGEさんにぶつけました。前提条件やなぜそれがダメなのか、良いのか、こういうケースだとどうですか?と質問攻めにされて、だんだん明確になっていった形を誰が見ても同じものをイメージできるような言葉に紡いで行ってくれました。最終的には評価の仕組みや評価表が作成されて、職員の皆さんに言葉で伝えられるようになりました。
    「評価制度を作る」と言っても、実際にはこんな過程を経るんだということが学びになりましたし、こういった過程があったからこそ、言葉として説明できるようになり、みんなで共通の認識を持てるようになるのだと思います。

    上田:改めて振り返ってみると、ここまで整備された評価制度は大手だけが作るものだと当初は考えていました。福祉業界の仕事の特徴でもありますが、数字だけで測れない部分が多く、それをどう評価に繋げていくのか、最初はどのような仕上がりになるのか正直イメージできなかったです。

    五葉:私も今だから言えますが、途中「いま、何をしてるんだろう?」という思いはありました。議論をしているものが最終的にどう評価制度につながっていくのかイメージするのは難しかったです。ただ、常に私たちの意見を肯定して、頭ごなしに否定せず深掘りしてくれるEDGEさんの姿勢があり、議論をしっかり導いてくれていたので、不安などは全くありませんでした。

    上田:最初に「人材要件」の作成にかなり多くの時間をかけましたが、ずっとこれをやっていて本当にスケジュール通りに終わるのか?と思っていました。これも今だから言える話ですが、人材要件をしっかり議論したからこそ、評価制度を仕上げていく過程では、スピード感を持って議論ができ、決定できたと思っています。
    EDGEさん以外のコンサルティング会社の話を聞いたり、セミナーなどを見て、事前にいろいろ調べたりもしていたのですが、その時の情報収集で得た印象から、評価制度構築は、賃金の議論が中心になると思っていました。
    その事前の予想は良い意味で裏切られました。EDGEさんの進め方はそうではなく、会社が各職種、各職位に対して何を求めるのかを言語化することに多くの時間を使い、議論していきました。その結果、出来上がった評価制度を職員の皆さんに説明する際にも自信を持ってお話することができています。
    ただ、議論の過程では言葉を絞り出すのが相当しんどかったです。サポートをしていただいて形になっていく過程に達成感はありましたが、時々出される宿題を私と五葉さんで議論をしても、なかなか結論がでずに半日を潰してしまうこともありました。

    佐原:関わった当初は、言語化することに相当苦労されていたように見えました。

    五葉:私が感じている感覚を言葉で表現した際、その前提が何なのか?、具体的な判断軸は何なのか?を毎回突っ込まれました。日頃から私の表現は抽象度が高いので、相手によって捉え方が違ったり、誤解を生じさせることも経験しており、課題に感じていた部分でもありました。それを的確に指摘され、EDGEさんから出された質問に答えていくことで具体性が上がっていったのです。

    上田:評価制度を作る過程で私と五葉さんとの間ですら、議論が噛み合わないこともありました。その際も双方の言っていることを具体化してお互いが理解できるようにしてもらい、議論が噛み合うように調整してくれました。結果的に議論がちゃんと前に進んでいきました。
    私たちも「こうしたい!」という思いはありましたが、評価制度を作った経験もないため、自分たちの考え方や意見が本当に正しいのか自信を持てない時期もありました。そんな時は、ほかの複数の選択肢を示してもらったり、他社事例をもとに別の提案をしてもらうこともありました。自分たちの元の意見のままで行こうということも別のやり方の方が良いという結論になることもありましたが、正しい選択肢の中から自分たちのありたい姿を元に自分たちで選び取り、自分たちの手で作り上げた制度なんだと自信を持てるようになりました。

    五葉:作った制度をどう説明するかというタイミングでの言葉選びの提案も、その言葉を使うことで皆さんに与える影響を具体的に解説してもらい、さまざまなことを想定しながら進めることができました。私たちが自信を持てない時には背中を押してもらい、納得して前に進めることができました。

  • 人事制度を作ることは経営と切っても切り離せない

    佐原:評価制度ができていく過程はいかがでしたか?

    五葉:人材要件の議論を進める中で記憶に残っていることは、一人ひとりの職員をイメージしながら考えたことです。「この人のこういう振る舞いは素晴らしいな。」とか、「なぜ、この人はこんな振る舞いをするんだろうか?」とか、「この人のこういうところは課題だけど、裏を返せばこんな良い面にもつながるな。」など、顔をイメージしながら考えていました。私の中では、この評価制度を作る過程で一人ひとりと向き合うことができたことも良かったと思っています。

    上田:人材要件を作って評価指標を作る際も、できるだけ人によって解釈が変わらないように具体性を持った表現になるように配慮しつつ、様々な出来事に対応できるようにあまりにも限定的になりすぎないようにするなど、一見すると相反する2つのバランスを取りながら作っていく必要がありました。この絶妙な落とし所もEDGEさんに相談しながら決めていきました。経営として何を優先するのかを決めていないと判断できないことも多々あり、それを考えるきっかけにもなりました。

    五葉:給与へどう反映されるかの肝心な部分も、「経営的な観点からどうしますか?」と質問された際にすぐに回答できないこともありました。改めてどういった順番で考えれば良いのかを整理してもらい、一つ一つ優先順位をつけて決めていきました。

    上田:実際にいろいろなものを決めた後に、あれこれ考えていくと、「こういう場合は、どう判断すれば良いのだろう?」という疑問が出てきました。現場に近い立場で仕事をした経験があるからこそ、そういった心配が数々出てきました。その際にもEDGEさんに相談し、その場で判断できるものはその場で決め、私たちの中で考えを整理する必要があるものは、持ち帰って考えて、修正をしていきました。実際に評価を担当する評価者の職員の方に説明する前に一定程度、考えうる疑問点をつぶせたことも大きかったと思います。

  • 言葉にしたからこそ浸透する

    佐原:評価制度を作ってまずは評価をする側の立場の方に説明会をしましたね。皆さんの受け止めはどうだったんでしょうか?

    上田:まず私たちも含めて、評価をする立場の職員への説明会を実施しました。その場にはEDGEさんにも来ていただき、実際に評価表を見せながら疑問に思うことや、こういう場合にはどうするのか?といった疑問にも答えてもらいました。一度、評価者へ説明する機会と疑問をぶつける機会があったため、全社向けの説明会の前にそういう機会を作って良かったと思います。

    五葉:私たちがどういう思いでこの評価制度を作ろうと思ったかを評価者へ伝える場にもなり、そういったことを言葉で表現して伝えられたのも良い機会でした。

    佐原:その後は全職員向けの説明会を実施しましたね。

    上田:職員の皆さんにとっても言語化されてわかりやすくなったことは良いことだと思います。実際に職員同士の会話において、評価表のこの項目はできている/できていないといった会話が出るようになりました。言葉で表現されて基準がしめされたので、徐々に意識してくれているように思います。

    佐原:ありがとうございます。最後に弊社にご依頼いただいての率直な感想をお聞かせください。

    五葉:言語化をはじめ、これまでやってこなかった、慣れていないことをたくさんやったので、苦しいこともありましたが、全体としては和気藹々と楽しく進められたと思います。それもEDGEさんの関わり方がそうだったからだと思うのです。そして、この評価制度ができたことで、職員の皆さんが方向性の間違った努力をしなくて済むようになります。頑張っているのにズレているから報われないし、評価もされないというのが一番悲しいと思うんです。今回の評価制度を作ったことで会社が何を期待しているのかが明確になりました。これがあることで、職員の皆さんも正しい方向に努力してもらうことができるはずです。これで共通認識ができますので、みんなが同じ認識を持って取り組める状況が作れました。

    上田:まず素直にお願いして良かったと思います。EDGEさんは私たちの議論にペースを合わせて対応してくれました。わからないことや理解が難しいことは率直にそれを伝えることができ、置いていかれている感を感じることがありませんでした。わからないことも丁寧に教えてもらい、一度で理解できない場合には、例を交えながら説明をしてもらえました。疑問や不安を残したまま前に進むことがなく、一つひとつ理解して、納得して前に進めたというのもEDGEさんの関わり方の工夫があったからだと感じます。
    そして、組織に対して悩んだり結論がでずにモヤモヤすることが、無くなりました。たとえば以前は、評価後の個別面談でも何を話せばいいか悩み、迷うことがありましたが、評価制度を作ったことで、それに沿って目標や改善点を話せるため、何を話そうという悩みは無いです。また認識を合わせやすくなるため、職員教育も指導もやりやすくなったと感じます。

  • EDGEのコンサルティングを検討している方へメッセージ

    佐原:最後にEDGEのコンサルティングを受けようか迷っている方へのメッセージをお願いします。

    五葉:まず私たちのように、評価制度をつくることを検討しているなら、絶対にお願いするべきだと思います。正直、安いサービスではないので、きちんと覚悟を持たないともったいないと思いますが、私は自分自身を見つめる良い機会になりました。EDGEさんとの打ち合わせは普段使わない脳みそを使うので打ち合わせが終わるとすごく疲れますし、前日はしっかり寝ることを強くおすすめします。
    仮に自分たちだけでやっていたらと考えると、絶対に今の状態にはなっていなかったと思います。私たちも評価制度に馴染みがなく、何から始めていいか全くわからない状態からスタートしましたが、同じように評価制度がよくわからない状態であっても、何らかの必要性を感じているならプロであるEDGEさんに相談することをおすすめします。

    上田:会社を長く続けるには絶対に避けて通れないことだと思うのです。組織を拡大したり、良くしたいと思っている経営者なら依頼すべきだと思います。逆に現状のままの方が楽だと思う方には合わないと思います。議論が二転三転しても嫌な顔をせずに議論に付き合ってくれて、自分たちの考えを否定せずに向き合ってくれたことには本当に感謝しています。私が当初持っていたコンサルティングに対する印象が、もっと怖いもので、少し間違ったことを言うと論破されると思っていたので、EDGEさんの関わり方は少し意外でしたが、顧客の思いや実現したいことを大切にしているからこそ、顧客とこういう関係性を作られているんだろうなと思います。

  • Interviewer’s VIEW

    聞き手:EDGE株式会社 代表取締役チーフエヴァンジェリスト 佐原 資寛

    EDGE 佐原当初お話を伺った際に、お二人の組織のために力を尽くしたいという強い思いと熱量を感じました。言語化をしていく過程の中では、ご苦労も多かったと思いますが、課題に真摯に向き合っていただいた結果、制度化までスピード感を持って進められたと思います。業界の中でも先駆けて組織作りに時間とコストをかけていらっしゃることからもわかるように、職員の方が活躍できる環境作りを第一に考えるとても素敵な組織です。事務所にお邪魔した際は、いつも明るく活気のある雰囲気で、皆さんが前向きに働いている姿が印象的でした。


    なかの屋ホールディングス様にご活用いただいたのは、人事・組織開発コンサルティングの【PLAN B 人事・組織課題解決コンサルティングプラン】です。